洗脳が解かれました!

愛犬ムサシの子育てに悩んでいた私が、中西先生の著書に共感し、半ば興味本位で参加させて頂いた今回のセミナーでは、その名の通り愛犬とのかかわり方のみならず、多くのことを学び、色々なことを考えさせられました。内容はなるほどと納得することばかりでしたが、中でも最も私の心に残る言葉が2つあります。

ひとつは旭山動物園の元園長さんが少年の頃にお坊さんから聞いたという「地獄とは・・・やりたいことができないことだ・・・それは人も動物も同じ。」

そして、もうひとつは「信頼関係とは相手をAcceptすること、そしてこれは一体感ではなく離別感であるということ。」

この考えは対愛犬のみならず、対家族、対友人、さらには対社会にも共通することです。どちらかと言うと、親しい者同士の関係において一体感を重視していた自分にとって、Acceptすることは今後周りの人たちや動物たちとの関係や付き合い方に良い影響をもたらしてくれるような気がします。

やりたいことができない、つまり何かに拘束されている、自由が無い状態・・・私の目に浮かんだのは、家の外に繋がれ飼われているワンちゃんたちでした。しかし、セミナーの中で「犬の本能的な行動」をリストアップしてみて、その殆どを我々人間が「犬の問題行動」と考え、制御している事実に驚くと同時に恐ろしさを感じました。

確かに「吠えない、噛まない、飛びつかない、引っ張らない・・・」犬が、優秀な犬だというのは世間一般の常識になっていて、私たちの頭に固定観念として刷り込まれています。

愛犬ムサシを我が家に迎えて間もない頃、近所を散歩していたゴールデンが、飼い主さんの横にピッタリくっついて脇目も振らず同じ速度で歩いているのを見て、なんてお利口な犬だろう。うちのムサシもああなって欲しいな、あんな風にお散歩できたらかっこいいなあ・・・と憧れました。きっとトレーニングを受けた子だというのは、素人の私にも一目瞭然でした。でも、もしかするとそのゴールデンは辛いトレーニングに耐えてきたのかも。首を何度も引っ張られたのかも。痛い思いをしたのかも・・・そんな可能性があろうとは、その時は想像すらしませんでした。

ムサシを近所の保育園に通わせるようになって、まずそこのトレーナーに教わったのが「首ショック」です。まだ体も小さかったので、こんな小さい子の首にこんな強い刺激を与えてこれは体罰ではないかと何度も尋ねました。その度に「ショックは親犬が首を噛んで良い事と悪い事を教えるのと同じだ。」と言われ反論もできず、半信半疑のまま私もムサシが「問題行動」をする度に「首ショック」をしていました。

何ヶ月経ってもムサシの引っ張り癖が直らず、ある日、私のやり方が甘すぎると注意され、トレーナーが見本を見せることになりました。少し興奮気味だったムサシの首に彼は何度もショックを与え、やっとムサシはオスワリをしましたが、その目は血走っていて「お母さん、助けて!」って訴えるように私を見上げました。この時、私は初めてこのやり方が間違っていることに気付きました。

そんな時、中西先生の「犬のモンダイ行動の処方箋」に出会ったのです!先生の本には犬に対する愛が溢れていました。素人の私にも共感できることが多く、夢中になって後編まで一気に読みました。ムサシと同じように少しやんちゃなラブちゃんのお散歩トレーニングの章を読み、私も早速翌日から真似をしてみました。根気よく数メートル行っては座らせ・・・また歩いては座らせ・・・2,3週間続けた頃、ムサシにも成果が表れ始めました。

それまでは「首ショック」のたびに自分の心も痛み、痛いことをされても引っ張るムサシにイライラしていましたが、初めて散歩中に私の気持ちがムサシに通じた気がして、それからはお散歩が楽しくなりました。私とムサシにとって、中西先生はまさに救世主でした!

こうして私は運よく正しい方向に導かれましたが、古い常識や間違った固定観念に縛られ、ネット上に溢れる裏付けのない不確かな情報によって、どれだけの飼い主が頭を悩ませ、どれだけのワンちゃんたちが苦痛を強いられているかと思うと悲しくなります。

私たち素人にとって、正しい情報の選択をすることがいかに大切かということも今回のセミナーで実感しました。中西先生の言葉に説得力があるのは、先生がそれだけの経験を積み、常に研究され、一つ一つの事柄に裏付けがあるからではないでしょうか。ところが、ネット上にはペット関連のサイトが山ほどあり、どこの誰とも分からない人(トレーナー?)が、無責任なアドバイスを上げていたりします。それでも、困ったり悩んだりしている我々おろかな飼い主たちはそれを鵜呑みにして、実行してしまうのです。当然その犠牲となるのが愛犬たちです。

今までは犬のしつけに関する本や、いろんなトレーナーさんからの教えにより、私は愛犬との間に築かなければいけないのは「主従関係」だと信じ込んでいました。その為、いつもムサシになめられてはいけない、こちらが上でムサシには従わせなければいけないと、自己暗示にかけていたところもありました。

確かに犬のしつけにおいては「~してはいけない」「~させてはいけない」など、やたら「いけない」事が多く、なんだが窮屈でしたが、そうしなければ後々大変なことになる、と脅し文句のようなことまで書いてあるので、(※CPの高い私は)言われるまま真面目に実行し、さらには夫にまでそのやり方を強要していました。

もともと、2年前に他界した初代フレブルの、わがままで、マイペースで頑固だけれど人懐っこい性格が好きで、2代目もフレブルを迎えたのに、なぜか「2頭目はおとなしく従順な子に育てよう」と、その犬種特有のチャームポイントまで消してしまうような育て方を実践してしまっていました。

幸運なことに、先生の「よりそイズム」の本と今回のセミナーのおかげで私の洗脳が解かれました。愛犬との間には「主従関係」ではなく信頼関係=ACCEPT、ありのままの相手を受け入れることこそが大切なのだと教えて頂きました。自分の物差しで計らず、相手の気持ちになってみる。今後もこれを肝に銘じて愛犬や周りの人と付き合いたいと思います。

思い返すと、先代犬のくるみはご長寿で15年近く一緒に過ごしましたが、彼女の気持ちは手に取るようにわかりました。当時はネットの情報もあまり無く、犬に関する自身の知識も少なかったので、何か困ったことが起こると、どうしてくるみがそんな行動を取るのか、彼女の立場になって考え、その動きをじっと観察していました。

ところが、今はムサシが「困ったこと」をすると、すぐにスマホを取り出し検索し、十把一絡げの解決法を見つけては実行していました。情けないことに私はムサシ本人を見ていなかったのです。

中西先生は今までに2000頭以上の犬と関わってきたと言われましたが、きっとその1頭1頭をじっくり観察し、それぞれの子に合ったトレーニングを見出されてきたと思います。それが個々の個性を持った犬を受け入れ、よりそうということでしょう。

ムサシは我が家に来てまだ10ヶ月。時々何を考えているのか、なぜ暴れるのか、なぜ立ち止まって動かないのか・・・悩むことは色々ありますが、そんな時はムサシの身になって考えることを習慣にしてみようと思います。

間違った方向に進みかけていた私ですが、早い段階で中西先生と出会えたことは、飼い主の私にとってもムサシにとってもラッキーなことでした。そしてこのセミナーを受講したことによって、ちょっぴり不安だった子育て(もう成犬になりますが、まだまだ赤ちゃん!)に自信が持てるようになり、ムサシとのこれからの生活がますます楽しみになりました。先生との出会いに感謝、そしてこの出会いのきっかけを作ってくれたムサシにも感謝です!

<W.Rさん>

※交流分析で、自我状態を調べるためのツール「エゴグラム」の中の、Critical Parent(支配的な親)と表現される自我状態。